Machinist+DatasetでFixture代替
概要
Machinistは定義された条件下でテストデータを生成するプラグイン・gem。 DatasetはRubyのコードで記述したテストデータをDBに読み込むプラグイン・gem。
この2つを組み合わせることで(比較的)メンテナンスのしやすいfixtureの代替を構築することが可能になる。 流れとしては、Dataset上でMachinistを呼び出して複数のデータを生成して、それをDBに流し込むという感じ。
メリットは、
- 条件下でランダムなデータを生成してくれる(「特定のデータをfixture上に作って読み込む」というようなことも可能)
- リレーション先のデータも適宜生成してくれる(素敵!)。
デメリットは、
- データがランダムなので、全条件を必ずカバーするのは苦手&毎回同じデータが入ってくるとは限らない(回避できるかなぁ)
- fixtureに依存した書き方をしていると大幅な書き換えが必要かもしれない(レコード数によるテストなど。集計系では難しい…)
最終結果のコードをGithubにあげたので、そちらも参考に。
下準備
Machinist、Dataset、そして適当な文字列のデータを作ってくれるFakerをインストール・設定する。なおテストフレームワークにはRSpec on Railsを用いる。
YAMLに頼らないテストデータの作成を参考にさせていただきました。
Machinist
$ cd RAILS_ROOT $ ruby script/plugin install git://github.com/notahat/machinist.git $ vi spec/blueprints.rb # 新規作成/下記参照 $ vi spec/spec_helper.rb # 下記参照
RAILS_ROOT/spec/blueprints.rbに追記:
require 'machinist/active_record' require 'sham'
RAILS_ROOT/spec/spec_helper.rbに追記:
# 冒頭のほうに記述 require File.expand_path(File.dirname(__FILE__) + "/blueprints") # Spec::Runner.configureブロック内に以下を記述 # -> Shamで1度生成したデータはリスト形式でキャッシュされ、 # 以降はbeforeが呼ばれるたびにその先頭から順に取り出すようになる config.before(:all) { Sham.reset(:before_all) } config.before(:each) { Sham.reset(:before_each) }
Dataset
$ cd RAILS_ROOT $ ruby script/plugin install git://github.com/aiwilliams/dataset.git $ mkdir spec/datasets $ vi spec/spec_helper.rb # 下記参照
RAILS_ROOT/spec/spec_helper.rbに追記
require 'dataset' class Test::Unit::TestCase include Dataset datasets_directory "#{RAILS_ROOT}/spec/datasets" end
Faker
$ sudo gem install faker
Fakerについては取り扱われた記事が複数あり、RDocだけでも十分な気がするので、今回は特に説明を行わない。
Machinistでデータのひな形定義・作成
Machinistではモデルのテストデータのひな形(blueprint)を定義し、そこからテストデータをランダムで生成する。デザインパターン的にはファクトリパターンを活用していることになる。
以下の例に用いるモデルとしてPersonとGroupを考え、Group has_many Personという関係があるとする。
Groupは次のような属性値を持つ(timestampは省略):
カラム名 | 型 | |
---|---|---|
PK | id | integer |
name | string | |
hidden | boolean |
Personは次のような属性値を持つ(timestampは省略):
カラム名 | 型 | |
---|---|---|
PK | id | integer |
name | string | |
FK | group_id | integer |
hidden | boolean |
テストデータのひな形の定義
MachinistではRAILS_ROOT/spec/blueprint.rbでモデルごとにテストデータのひな形を定義する。
まず、属性値に使われるダミーデータの条件をMachinistに同梱されたShamを使って定義する。その際のフォーマットは次のようになる:
Sham.データ名 { データ生成メソッド }
このデータ名はモデルの属性名と一致する必要は無い(使い回しが可能)。 次に例を示す。
Sham.person_name { Faker::Name.name } # Faker::XXX.xxxは自動的にランダム生成してくれる Sham.group_name { Faker::Company.catch_phrase } Sham.age { rand(100) } # 自分でデータを用意するときは、適当にrand関数を使う # Shamはダミーデータを生成するときに、デフォルトではユニークになるように調整する # ユニークな必要が無い・それだとデータ数が足りない場合には:uniqueオプションでfalseを設定して重複を許可する Sham.boolean(:unique => false) { [true, false].rand }
上記は次のようにまとめて定義することもできる。
Sham.define do person_name { Faker::Name.name } # Group#nameとPerson#nameは似ているけど別物なので group_name { Faker::Company.catch_phrase } # 別個に定義しておく age { rand(100) } boolean(:unique => false) { [true, false].rand } # boolean型は使い回しが効くので、一般的な名前をつけておく end
続いて、モデルのテストデータのひな形は次のように定義する。
Group.blueprint do name { Sham.group_name } #=> データ生成時にはSham.group_nameで定義したFaker::Company.catch_phraseが呼び出される hidden { Sham.boolean } end Person.blueprint do name { Sham.person_name } age #=> Sham中に同じデータ名があればそれが利用される(ここではSham.ageが呼ばれる) hidden { Sham.boolean } group { Group.make } #=> ここがキモ!(後述) end
Machinistではモデルにmakeというメソッドが追加されており、このメソッドでblueprintの定義に従ってテストデータを生成・DBに保存する。
そして、Person.blueprint中のgroup { Group.make }
部分では次の二つを実行するように指定している:
- Personのテストデータが生成されるときに、belongs_to先のGroupをGroup.blueprintで定義された通りに自動的に生成・保存してね
- ついでにそのGroup#idをさっきPerson#group_idに設定してね。
このおかげでbelongs_toが自動的に生成されるため、ちょっとリレーションの設定が楽になる。 ただしhas_one/has_many関係は別途生成する必要がある(きっとあとで書く)。
最終的に次のようなRAILS_ROOT/spec/blueprint.rbになる。
require 'machinist/active_record' require 'sham' require 'faker' Sham.define do person_name { Faker::Name.name } group_name { Faker::Company.catch_phrase } age { rand(100) } boolean(:unique => false) { [true, false].rand } end Group.blueprint do name { Sham.group_name } hidden { Sham.boolean } end Person.blueprint do name { Sham.person_name } age hidden { Sham.boolean } group { Group.make } end
specファイルから呼び出す
下準備の段階でMachinistに関するファイルは読み込まれるようになっているので、特にspecファイル中でrequireを行う必要は無い。
以下の3つのメソッドを利用してテストデータを生成して利用する:
メソッド名 | 概要 |
---|---|
Person.make |
Personをblueprintに従って生成し、DBに保存したのちにそのインスタンスを返す(Person.createに相当) |
Person.make_unsaved |
Personをblueprintに従って生成し、DBに保存せずにそのインスタンスを返す(Person.newに相当) |
Person.plan |
Personの属性値をblueprintに従って生成し、それをHashで返す(:idは含まない) |
blueprintの定義を一部上書きしてデータを生成したい場合には、次のように各メソッドの引数にHashで指定する:
grand_father = Person.make(:age => 200)
名前付きblueprint
場合によっては、通常の属性値とは異なるパターンの属性値を持ったテストデータを作りたくなることがある。 その場合には、次のようにblueprintの先頭に引数でパターンの名前を付けて別個に定義する。
次の例ではPersonの別blueprintとして:wizardというものを定義しており、:ageプロパティが1000より大きくなるように定義している。
Person.blueprint(:wizard) do age { Sham.age + 1000 } end
名前の省略されているblueprintの名前は:masterとなり、 省略された属性値(ここではname, hidden, group)は:masterのものと同じ条件で値を生成される。 つまり、名前付きblueprintは:masterのblueprintを継承し、属性値の定義を上書きしたものである。
DatasetでRubyでテストデータを突っ込む
Datasetはfixtureの代わりに、Rubyのコードで定義したデータをDBに流し込むというものである。
以下の例に用いるモデルとしてPersonとGroupを考え、Group has_many Personという関係があるとする。
Groupは次のような属性値を持つ(timestampは省略):
カラム名 | 型 | |
---|---|---|
PK | id | integer |
name | string | |
hidden | boolean |
Personは次のような属性値を持つ(timestampは省略):
カラム名 | 型 | |
---|---|---|
PK | id | integer |
name | string | |
FK | group_id | integer |
hidden | boolean |
データを作る
モデルごとに"RAILS_ROOT/spec/datasets/テーブル名_dataset.rb"というファイルを作り、そこに次のような記述をする。
class テーブル名Dataset < Dataset::Base def load create_record モデル名, データ名, 属性値のハッシュ end end
モデル名、データ名はStringでもSymbolでも構わない。 属性値のハッシュには:idを指定することもできる。
例えばPersonのテストデータRAILS_ROOT/spec/datasets/people_dataset.rbは次のように作る:
class PeopleDataset < Dataset::Base def load create_record :person, :person1, :name => "Bob", :age => 18, :hidden => false, :group_id => 1 create_record :person, :person2, :name => "Anthony", :age => 17, :hidden => false, :group_id => nil end end
これは、RAILS_ROOT/spec/fixtures/people.ymlに次のような記述をしたものとほとんど等しい:
person1: name: "Bob" age: 18 hidden: false group_id: 1 person2: name: "Anthony" age: 17 hidden: false group_id: null
このままではDatasetを使うメリットがない(逆に言えばfixtureと同じ使い方も可能であるということ)。 しかし、datasetファイルはRubyで記述するのでループを使えば大量のデータを少ない行数で生成できる:
require 'faker' class PeopleDataset < Dataset::Base def load group_ids = Group.all.map { |group| group.id } 10.times do |i| create_record :person, "person#{i}", :name => Faker::Name.name, :age => rand(100), :hidden => [true, false].rand, :group_id => group_ids.rand end end end
実際この程度のことならfixtureをerbで記述することでも可能だけど、 erbをパースしてそれをさらにYAMLでパースして…とやるよりは効率は良いと思われる。
specファイルからdatasetを読み込む
使い方は単純で、fixturesメソッドの代わりにdatasetメソッドを利用すればいい:
describe Person dataset :people # fixtures :people : :
あとはfixtureとほとんど同じで、people(:person1)
というようにデータ名を指定して呼び出すこともできる(はず)。
MachinistとDatasetを組み合わせる
MachinistとDatasetを組み合わせて使うことで、リレーションが構築されたテストデータを(fixtureほど)意識せずに利用できる。
dataset用のblueprintを定義する
「下準備」で書いたように、Shamは生成データをリストでキャッシュし、以降はbeforeが呼ばれるたびにそのリストの先頭から順に値を呼び出す。 このため、specファイルからmakeやplanを呼び出すときにはdatasetでDBに保存されているものと同じデータをキャッシュから読み出してしまい、 ユニーク制約を付けている属性値などを取り扱う際にエラーが発生する。 これを回避するために、datasetを読み込む際に生成するテストデータに「datasetで読み込んだデータである」という しるし を、名前付きblueprintを使ってつける。
今回の例ではGroup#nameとPerson#nameにユニーク制約がかかっているとして、datasetから読み込むときには:datasetという名前付きblueprintを使って、 それぞれの値の末尾に"(dataset)"というしるしをつけるとする:
Group.blueprint(:dataset) do name { Sham.group_name + "(dataset)" } end Person.blueprint(:dataset) do name { Sham.person_name + "(dataset)" } group { Group.make(:dataset) } # ここ大事! end
datasetから生成したデータのnameには必ず(dataset)という文字列をつけなければならないので、 PersonからGroupをmakeしたときにも:datasetのblueprintを使用するように設定する。
こうすることで、datasetから生成する場合には:datasetと名付けられたblueprintが利用され、 specファイルからは今まで通り引数無しで:masterのblueprintを利用することになる。
datasetファイルを作る
例えば、Personのテストデータを作りたいときには、RAILS_ROOT/spec/datasets/people_dataset.rbに次のように記述する:
class PeopleDataset < Dataset::Base def load 10.times do |i| create_record :person, "person#{i}", Person.plan(:dataset) # さきほど定義したdataset用のblueprintを指定 end end end
Person.plan時にリレーション先のGroupも生成・保存されるため、これだけで10個のPersonとそれぞれに対応したGroupのデータを作ることができる。
逆にGroupのテストデータを作りたいときには、RAILS_ROOT/spec/datasets/groups_dataset.rbに次のように記述する:
class GroupsDataset < Dataset::Base def load 3.times do |i| group_id = create_record :group, "group#{i}", Group.plan(:dataset) # さきほど定義したdataset用のblueprintを指定 # Group.plan時にはリレーションが張ってあるPersonは生成されない(blueprintを参照)ため、 # 別個に生成を行う必要がある 5.times do |j| # さきほど定義したdataset用のblueprintを指定 create_record :person, "person#{j}_group{i}", Person.plan(:dataset, :group_id => group_id) end end end end
ここでcreate_recordではなく、Machinistで用意されるmake等を使っても問題は無いと思われる。
このようにMachinistとDatasetを組み合わせることで、リレーションが自動的に構築されたテストデータを生成することが可能になる。
datasetファイルを利用する
specファイルからdatasetファイルを利用するには、次のように記述すればよい:
describe Person dataset :people # fixtures :people, :groups : :
fixturesでは:peopleと:groupsの両方を指定していたが、datasetでは:peopleのみを指定している。 これはpeople_dataset.rbを読み込めば、PersonだけででなくGroupのテストデータも読み込まれるためである。 ただし、groups_dataset.rbの値も読み込みたい場合には、続けて:gorupsを指定すればよい(なにかしらバッティングが生じるかもしれない)。
また、specファイルからはMachinistのmake、make_unsaved、planが利用できるので、 テストデータが必要な場合にはそれらを呼べば良く、毎回適当な値を考える必要は無い。