『恐るべき旅路 火星探査機「のぞみ」のたどった12年』を読んだ
読み始めてから一度間を空けて、つい最近一気に読み終えた。
当時、火星衛星探査機「のぞみ」の存在が自分の生活に大きく印象を与えたということは、正直無かった。「がんばれー」とは思ったりはしたけども、「のぞみ」の生死に生活が左右されるようなことはもちろん無く(そもそも危機的状況においては箝口令が敷かれていたということだし)、火星への軌道投入に失敗したという話を聞いても「ふーん」と感じる程度だった。
でも、この本で語られていた内容は壮絶で、地球でのパワースイングバイに失敗したあたりから数度涙を流しそうになった。「のぞみ」を運用する技術者・科学者たちにただならぬ執念を感じた。1ビットの情報だけを地球とやりとりしながら虚空を飛んでいく「のぞみ」の姿を想像し、また終盤で地球スイングバイをするために地球の接近した「のぞみ」の姿をとらえた写真を見たときには、そこに力強さと美しさを感じた。結局、涙を流さずにはいられなかった。
技術・科学的に専門的な知識については本書を読んだ方がわかりやすいし、内容的にもわかりやすいのでお薦め。
科学技術や、「のぞみ」という存在以外の点で本書を読んでいくつか思ったことがあるので、簡単にメモをしておく。
- 科学技術の発展について理解があるマスコミってないものかな。「失敗すれば予算の無駄」といった安直な発想をしないもの。やはり科学者・技術者が自分たちで情報を発信していくしかないのかな。
- 三機関のJAXAへの統合とか、NTスペースの設立とか、経営的(JAXAは経営って言うのか?)な面では「統一」によって効率が上がるかのように見えても、その業務や既存の風土を考えたときに非効率的な組織運営が行われるようではせっかくの技術が削がれてしまうだけ。技術とそれを有する人材がウリの組織なのだから、それを中心において組織を構成・運営すべきなんだろう。
- 科学技術省、今からでもやっておくべきじゃない?官僚的でなく、もっと科学技術の発展に先見性のある組織を。
日本語が変だったりするのはいつものこと。