「墜ちていく僕たち」を読んだ。
森博嗣の墜ちていく僕たちを読んだ。
「インスタントラーメンを食べると、男が女に、女が男になる」という、少しばかりファンタジックな内容。
以下、ネタバレを含むかもしれないので、未読の人は読まない方がいいかも。ちなみにレビューというほどのものではなく、あくまでも感想なので、批評的なものを求めてるなら読む価値はないと思う。
スカイ・クロラのような純文学が書けるのはわかった。でも、この作品を読み始めたときには驚いた。一人称は一人称なんだけど、状況描写のようなものが少なく、彼が考えていることをそのまま書いていた。なんというか、この記事を書いている自分のように、彼の頭の中で思考に使った言葉通りに作者が書き出しているという感じ。
で、1話目では彼とその先輩が女になってしまい、それはそれで楽しむというもの。以前ドラマで落雷で男女の体が入れ替わったってのがあったけど、それとは全然違う。まぁ完全に他人になったからじゃないのかもしれないけど、彼ら(もはや彼女ら)は女性になったことを楽しんでいた(あ、同じこと繰り返してる)。ちょっとした買い物でも楽しめるってのは、確かに楽しい。
2話目もそんな感じの書き方。ただ主人公が同人書きってのが、森さんのイメージとのギャップを生んでくれた。森さんは想像以上に面白い人なのかもしれない。
3話目はこれまでとはちょっと違う。性別が入れ替わったことを本人たちは知らないのだ。それが最後のシーンを印象的にさせた。ついでに、主人公の女性がまた凄く楽観的。自分もこの本の解説者と同じくどちらかと言うと安定志向な人間なので、こうはなりたくないけど、でも逆に尊敬せずにはいられない。なんで死んでまで楽観できるのだろう。
4話目は1話目を他人から見た話。人間のちょっとした動作が美しいというのはわかる。かといって盗撮モドキなことをしてまでそーいう表情なりなんなりを見たいとは思わないけども。それ以外に面白く感じた点は、やっぱり最後のシーン。「やったじゃん、あんた生まれ変われるよ」と言ってやりたい。彼の反応を見てみたかったけど、それは無粋というか蛇足かな。
5話目は、これまでの話とは多分全く以って関係ないけど、それはどうでもいいことで、一番普通の話かもしれない。「エイドリアン」をタイトルに含むなんて、どんな曲だか気になる程度。でも、最後にはやっぱりなわけで、先が気になる。これも蛇足か。
薄い一冊だったので、すぐに読み終えることが出来た。読み終わった直後は「なんだこれ?」と思ったけど、こうして書いてみると、確かに「凄く好き!」というほどのものではないけど、たまに突発的に読み返したくなる一冊ではある気がする。
「すべてがFになる」とは相当趣向が違うけど、悪い本ではないと思う。まぁ、もともとミステリーものが苦手ってのがあるのかもしれないけど。