「亡国のイージス」を読んだ。

亡国のイージス 上巻下巻を読み終えた。読み終えるまでは知らなかったけど、今年の夏に映画化されたものが公開されるらしい。

以前に読んだ終戦のローレライがその名のとおり終戦間際の話だったのに対して、こちらは現代の話。ストーリーを要約すると、「最新鋭の装備を持った海自の護衛艦が反乱を起こして、分解不可能な化学兵器を積んだミサイルを東京に打ち込もうとする。そしてそれを国民に知られることなく防ごうとする政府と防衛庁。戦後かつてない事件を通して日本の国防意識、果ては日本という国そのものが問われる」ってことになるのかな。

以下、ネタバレが含まれる可能性があるので、未読の人は読まない方がいいかも。

日本を護るための自衛艦が日本に脅威をもたらすというのがまず何よりも面白そうに感じた。

話の本筋が始まるまでの艦長と先任伍長、行の出生を読んでいるときは、正直早く本筋に入らないかと思った。

菊政が最後に仙石と交わした会話が印象的というか、なんというか。

一回目のどんでん返しというか、行がダイスの隊員で溝口こそがヨンファだというのは、読み手としては薄々感づいていたけども、艦の乗組員にはそんなことがわからないわけで、仙石が引き込まれて行を機関室から連れ出したときには、「やられた!」と感じた。

戦闘シーンよりも、政府と防衛庁、艦長と政府・防衛庁、乗っ取りを起こした幹部乗組員とヨンファ一味のやりとりが面白かった。それらがGUSOHが発射されるかどうかを決めるのだし(ヨンファ自身は端っから撃つつもりだったけど)、彼らの間にある埋まることのない様々な溝が大事だからだ。

最後に仙石と行が、二人して安全装置を外すシーンはハリウッド的だなぁと感じた。

ローレライと同じように、頭でっかちの幹部が成長というか、やっとこさ現実を知るというようなシーンが描かれていた。

2回目の大きなどんでん返し、ネストにGUSOHが入っていなかったというのは、「あー、やりそうな手だ」と思った。これが一番面白かったかな。

「これはいただけないなぁ」って点は、読んでるうちはあったのかもしれないけど、のめりこんでいくうちに忘れてしまった。そういや離艦してから最後までF15は飛んでいたけど、そんなに燃料はもつもんなのかな?

「うらかぜ」の撃沈などで、専守防衛って現実的には艦に沈めと言っているようなものなのだと、初めて知った。護る前に沈んでは意味がない。ここらへんのことは改正されていくのかな?

今回の話とは関係ないけど、自衛隊が海外派遣で災害救助なんかに行っても、「許可されていないことはするな」というルールがあるから柔軟に活動できない。対照的に海外の軍なんかは、「不許可なこと以外はやってもかまわない」というルールなので、自衛隊よりも柔軟に活動できる。とか、そんな話をどっかで聞いた。

というわけで、亡国のイージスは終戦のローレライと違って現代に直結した問題が含まれている(ように自分は感じた)ので、ストーリーだけでなくそこらへんの背景まで考えると、より一層楽しめると思う。